堕落の勇者

33/38
前へ
/81ページ
次へ
翌日………。 オレは森林の中でハードな訓練を受けていた。 真剣を使った訓練。 アージュ(?)曰く、練習用になまくらの剣をいくつか用意しておき、レプリカは絶対に使わないらしい。 理由は簡単で、振った時の軌道がかわるのが気にくわない、実戦で同じ軌道にならない。 つまり、レプリカと真剣では、お互いに違和感があり、それが気に食わないのだろう。 ハードな訓練とは、真剣を使って相手に(アージュ?に)傷を負わせろとの事だ。 だが、オレはすでに刀の方が手に馴染んで、剣を上手く扱えなくなっている。 (……もとから上手かった訳じゃないけどさ) それが突如、再び剣を振る事になるなど、想いもしなかった。 『くそ……重い……』 ずっしりとして、しかししっかりと存在感を与える『それ』は、『斬る』事よりも『叩き斬る』事の方が得意な気もする。 けれど、コイツは刃物で、やはり『斬る』為の武器だった。 アージュ(?)が剣を振る度に、斬られた風が真空波となり、頬や腕を斬り付ける。 知らず知らずの内に、オレの腕はボロボロに切り刻まれている。 例え、剣が届いておらずとも、確実にオレの体力をすり減らしているのだ。 『ホラどうした? かかって来なければ、今日の訓練は終わらんぞ』 彼は以前同様、余裕の姿勢を崩さない。 (何故だ……何故、あんな事が出来るんだ…?) ただ剣を振っているだけのようにも見える。 自分の太刀筋と違うところを、必死に思い出す。 彼は、踏み込みが無いと言っていた。 (どういう事だ……?) 構えをとりながら考えこんでいると、地面が異様に凹んでいる部分がある事に気づく。 足の形……つまり、足でえぐったような跡だ。 (………そうか………) 何となく、わかった気がする。 オレの連撃は踏み込みが甘過ぎるのだ。 ただし、わかったと言っても、それで強くなれるのかはわからない。 慣れるまではコツを掴まなければ、力は分散するだけだ。 しかし、わかった以上は実践あるのみ。 理屈をいくつ抱えたところで、強くなれる訳でもあるまい。 オレは剣を構え直す。 (実践……あるのみ!) そして、突っ込んだ。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

397人が本棚に入れています
本棚に追加