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剣の柄を強く握る。
重く、けれどしっかりとその存在を、手のひらを通してオレに伝えてくる。
目の前には師。
殺気こそ感じないものの、どんなにこちらが殺気を放とうが余裕を崩す事は出来ない落ち着きを持っているのは、さすがというべきか。
(昨日はあっちが先だったな…)
ジリジリとにじり寄る。
(今日は……オレから行く!)
飛び出した。
剣を左へ横凪ぎに払う。
予め予想していたのだろう、簡単に防がれた。
今度は勢いを反転させ、相手の右腰から左肩への袈裟斬り。
シュトーレンは身を引き、かわしていた。
(素早い……)
絶対に、今のオレには出来ない身のこなしだ。
反射神経も獣以上。
(バケモノか…!?)
すでに『野生児』という言葉をも越えていた。
シュトーレンはニヤリと笑う。
『なかなかやるな……だが、課題はその迷いを断ち切る事にある。己の弱さを己自身で知り、克服するのだ』
わかっているさ。
けど、今は何が弱いのかわからないんだ。
『今度はこちらから行くぞ!』
言うと同時に、シュトーレンは凄まじい速度で駆けてくる。
殺気が爆発した。
(―――来るっ!)
右肩から左腰への逆袈裟斬り。
受け止めるが……重い。
服の袖が裂けた。
それでも、相手を見据える。
師は剣を引く。
そのまま胸を狙った突き。
オレは剣で受け止める。
だがその一瞬、剣で相手が見えなくなる。
かわすべきだったと後悔した。
腹に衝撃。
後からくる痛みと、浮力。
蹴りをまともに食らったとわかったのは、体が空へ飛んだ後の事だった。
体が地面に叩き付けられる。
蹴られた箇所、内臓が潰れたかように痛みだした。
オレは嘔吐した。
訓練はまだ始まって間もないというのに、一本取られた。
それは少なからず、オレに精神的な衝撃を与える。
戦場では、この一本で勝敗が決定する。
オレは、まだまだ未熟な剣士だった。
剣を杖に起き上がる。
あんな事を言っていた師だが、オレが立ち上がるのを待っていた。
『貴様はまだまだ強くなるはずだ。腕をもっと磨け。……今日はここまで!』
師は去っていく。
その背中は、少しガッカリしているようにも見えた。
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