希望と絶望と

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オレは空を見上げて寝転んでいる。 シュトーレンとの特訓が始まってから既に2週間。 魔法は相変わらずだし、剣術もアレから変わらずだ。 特訓が終わった後の茜色に焼けた空をオレは見ていた。 『魔法……か……』 あれから何度も練習をしたが、成功するような気配は無い。 才能、という言葉が、不意に頭をよぎった。 そんなオレに、突然声がかかる。 『貴様……なぜここにいる?』 どこかできいた声だった。 視線の傍らにその顔を捉える。 『レイン……?』 『違う、ラインだ!』 うろ覚えの名前を口にしたが、違ったようだ。 『そういや、オレと一文字違いだもんな』 『そんな覚え方をするんじゃない!』 また怒られた。 何故かラインはため息をつく。 『で……貴様、なぜここにいる? 森にでも迷ったか。 情けない男だな。 貧乏勇者は所詮そんなものか。 だいたい貴様はゆう…』 『あぁ、わかったわかったからチョイと黙れ』 長くなりそうなので、止めてやるのが義理人情というヤツだ。 オレもため息をついた。 どういう訳か、ヤツがスゴい形相で睨んでる気もするが、気のせいだな。 『オレは自分の剣術に不満がある。だから、この近くの剣士に剣を習っているんだ』 事情を話してやる。 誤報をさらにでかくされたのでは、たまったものではない。 『この森で剣士だと? 熊の間違いじゃないのか?』 『生命力は熊以上だが、たぶん人間だ』 しかし熊……得てしてピッタリの表現である。 オレは笑いをこらえていた。 『で? そういうアンタは何をしてるんだ? ここは冒険者の宿なんぞ無いぞ』 『わ、わかっている! ただの寄り道だ!』 (……何故、怒る…?) ヤツは相当腹立たしかったのか、そのまま森へと消えて行った。 (………あ!) 簡単な事だ。 森で迷えば、誰でもストレスが貯まる。 つまり……。 (ラインは迷子勇者、と…) 一人の勇者の通り名が確定した。
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