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青年がニヤリと笑う。
『へぇ~……まだ呪文、使えるんだ? 彼女、まだ生きてるんだねぇ』
青年の言葉が終わる前に、シュトーレンは次の攻撃を開始していた。
左手を青年に向け、そこから炎の球が三発連続で飛び出す。
(メラミ……中級炎系の呪文を三発連続、しかもリロードがほとんどない…)
青年は飛んでくる炎に手のひらを向けると、一度でそれらを相殺した。
(ヒャダイン……高等氷系の呪文? コイツら、どっちもすげぇ強い…)
オレに止められるような戦闘ではない。
あの中に入るには、相当な無謀さが無いと、普通の人間にできる事ではない。
オレは呆然とするしかなかった。
青年が出した炎をシュトーレンが切り裂き、そのまま斬りかかるものの、ひらりと身を交わす。
ボミオスで相手の速度を落とそうとするものの、呪文を弾かれる。
広範囲の攻撃を狙っても、範囲重視故の威力低減で弾かれる。
そんな終わりの見えない戦闘だが、青年が意外な終わらせ方をする。
一瞬だけ見えたアイテムは、キメラの翼だった。
どうやら戦闘を脱出したらしい。
悔しそうに見送りながら、シュトーレンは剣を鞘に戻す。
そしてオレを睨み付けた。
『詳しい話をきかせてもらおうか』
その気迫は、拒否できない程の《怒り》《呆れ》《哀れみ》《後悔》、そういった感情が隠しきれずにしっかり残っていた。
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