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『さて、聞かせてもらおうか』
小屋に着くなり、休みなしで聞いてくる。
オレは素直に自白した。
『剣の腕だけで戦いを挑むよりも、魔法も使えた方が戦いには有利だからだ』
事実、ただ剣だけを振り回しても、魔王に勝てるとは思えない。
だが、オレの言葉をきいたシュトーレンは、苦虫を噛んだような、なんとも奇妙な顔をする。
『ひとつ聞いておくが、お前さんは魔法と呪文の違いをわかっているのか?』
(魔法と呪文の違い? 同じじゃないのか?)
即答できないオレの反応から察したのだろう、彼は話を続ける。
『呪文というのは、何かを代償にして、呪術を使用する方法をいう。 魔法は己の知能、経験、技・・・そういったものから編み出される、剣でいうなら特技であり、代償が無い』
シュトーレンは一気に説明をする。
彼の説明どおりなら、つまりは魔法と呪文は違うもので、代償があるか無いかの違い。
だが、それが本当なら、魔法を使うものには魔力切れというものが存在しない事になる。
怪訝に想ったことが顔に出ていたのか、彼は補足した。
『魔法使いは一般に呪文を使うために、あらかじめ契約をするのだ。 だが、勇者という者は魔法を使う。 呪文では無い』
オレはその説明で愕然とした。
経験不足で魔法を覚えられなかっただけで、本来は勇者は呪文の契約を必要としないのだ。
シュトーレンはため息をつく。
『まぁ、呪文を使用しなければいいだけの話だ。
・・・ちなみに、何を代償にしたんだ?』
『精神』
オレの答えに、げんなりしたような、安堵したような、何とも言えない顔をする。
それは、何か言いたいが、我慢しているような顔にもみえた。
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