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真夜中。
オレは物音で目を覚ました。
今が何時なのか表すものが、この小屋には無い。
ふと見るとシュトーレンは厠にでも行ったのか、寝床に姿が無い。
寝ぼけたまま、ボ~っと天井を見上げる。
夕方の話を思い出した。
結局、シュトーレンが何に腹を立てていたのかわからなかった。
あの青年に対しての殺意もわからない。
オレにはそこまであくどい魔族には見えなかったのだが・・・。
(まあ、アイツの事を詮索したところで話すとは思えないしな・・・)
自分の中で、保留・・・というよりも無駄な問題として片付ける。
まだ日が昇るには時間がありすぎる。
もう一度、寝床に身を沈めようとした。
(ん・・・?)
遠くで何か音がする。
爆発するような轟音。
オレは外に出た。
夏至から始まった旅だが、もう秋の気配が近づいている。
少しずつ寝苦しい夜が、すごしやすい温度になってきている。
あと2ヶ月後には、ここいらが真っ先に雪原に変わるのだろう。
夏季よりも湿度が低くなった空気を深く吸い込んだ。
視界の中に雷が見えた。
その直後、付近が赤々と炎の柱。
『げほっ、げほっ、げほっ』
それが何かわかって、思わずむせた。
何かが戦っている。
寝床にシュトーレンの姿はなかった。
(杞憂だといいが・・・)
オレはその場所へ駆け出した。
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