希望と絶望と

7/11
前へ
/81ページ
次へ
真夜中。 オレは物音で目を覚ました。 今が何時なのか表すものが、この小屋には無い。 ふと見るとシュトーレンは厠にでも行ったのか、寝床に姿が無い。 寝ぼけたまま、ボ~っと天井を見上げる。 夕方の話を思い出した。 結局、シュトーレンが何に腹を立てていたのかわからなかった。 あの青年に対しての殺意もわからない。 オレにはそこまであくどい魔族には見えなかったのだが・・・。 (まあ、アイツの事を詮索したところで話すとは思えないしな・・・) 自分の中で、保留・・・というよりも無駄な問題として片付ける。 まだ日が昇るには時間がありすぎる。 もう一度、寝床に身を沈めようとした。 (ん・・・?) 遠くで何か音がする。 爆発するような轟音。 オレは外に出た。 夏至から始まった旅だが、もう秋の気配が近づいている。 少しずつ寝苦しい夜が、すごしやすい温度になってきている。 あと2ヶ月後には、ここいらが真っ先に雪原に変わるのだろう。 夏季よりも湿度が低くなった空気を深く吸い込んだ。 視界の中に雷が見えた。 その直後、付近が赤々と炎の柱。 『げほっ、げほっ、げほっ』 それが何かわかって、思わずむせた。 何かが戦っている。 寝床にシュトーレンの姿はなかった。 (杞憂だといいが・・・) オレはその場所へ駆け出した。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

397人が本棚に入れています
本棚に追加