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木の根に足をとられる。
転びそうになった。
それでも構わず、走る。
夕方にみた光景が頭の中にあった。
シュトーレンと互角に戦った青年。
だが、オレには青年側に余裕があるように見えた。
少なくとも、彼はあの状態でもまだ力を隠しているのだろう。
今戦っている奴らが、彼らという確証は無い。
だが、オレには嫌な予感が渦巻いていて、離れなかった。
現場に近づくにつれ、あたりの景色が荒れていく。
直径がオレのウエストほどもある樹が、幹からすっぱりと切られて寝ている。
周囲の樹の枝も焦げたり、凍り付いていたり・・・。
言わずともわかる、ここで魔法、あるいは呪文が使われていた跡だ。
最初にみた樹は、そこらで売られているような斧でも、あんなに綺麗に切れはしない。
相当な腕と刃物が必要だ。
警戒しながら先を急ぐ。
突然、景色が開けた。
やはりシュトーレンが戦っていた。
その相手は・・・魔族のように見える。
夕方の青年では無いはずだ。
シュトーレンが斬りかかる。
だが、魔族はひらりと身をかわす。
空振りした剣を、自分の体ごと回転させて、第2撃。
魔族の男は手のひらを、向かってくる剣へ向けると、魔力か何かでシュトーレンごと動きを止められた。
シュトーレンは一度身を引くと、呪術を放つ。
雷系中級呪文。
だが、魔族は何かを前方に投げつけると、雷呪文はそれに引き込まれるように、地面に反れた。
(コイツ、たぶん夕方の青年よりも強い・・・)
シュトーレンがおされ気味だとわかっているものの、オレは足がすくんで、シュトーレンのところへ駆けつけることは出来なかった。
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