追憶~Boy's Memory~

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義人の取り巻き達が、義人を連れて去った後、屋上には傷だらけの雅人と、それを心配そうに見つめる鈴原の姿とがあった。 鈴原は雅人にすっと手を差し出した。 「大丈夫?…大丈夫じゃないか…。ほら、掴まって!!」 雅人はその手に掴まり、ヨロヨロと立ち上がった。 「…ありがとう…。おかげで助かったよ…」 「どう致しまして。ところで、歩ける?保健室まで連れていってあげようか?」 鈴原は心配そうに雅人の体を支える。 「いいよ。…え~っと、…鈴」 「鈴原 雪奈(ゆきな)よ!!よろしくね!」 「あ…うん。よろしく…」 たじろぐ雅人を支えながら、雪奈は言った。 「築山君、いつも1人でいるから絡まれるのよ。だから、これからは私がずっと一緒に居てあげる!!一緒に居て、守ってあげる!!」 そう言って、ニッコリと微笑んで見せた。 「もう安心してね!!」 そんな彼女の様子に雅人は心奪われた。 思えば、あの頃から彼女のことが気になりだしていたんだろう… それからというもの、彼女はいつでも側にいて、いつも微笑みかけてくれた。 そんな中で、雅人が一番嬉しかったのは、出会ったばかりの頃の一言だった。 それは雅人が「鈴原さん」と呼んだ時のことだった。 「やだぁ!固っ苦しいな~!!もう友達なんだから『雪奈』とかでいいよ!!」 この一言が、とても嬉しかった。 ―「もう友達なんだから」― 今まで友達というものがなかった雅人にとって、最高の一言だった。 しかし、そんな楽しい時間は長続きしなかった… 雪奈と出逢って一年程経った、ある日の帰り道、突然雪奈が衝撃の告白をした。 「…雅人。ゴメン!!…私、引っ越すことになっちゃったの……それも遠くに…。」 雅人は大きなショックを受けた。 「ウソ…だよね?俺を1人に…しないよね?」 しかし、雪奈はただ、首を横に力無く振るだけだった。 「そんなッ!!…ひどいよッ!!」 雅人はそう言って駆けて行った。 雪奈は後を追いかけようとしたが、自らの非のために追うことが出来なかった。 それから一週間程、雅人は学校に現れなかった。雪奈が訪ねても、会いたくないの一点張り。引っ越し前日まで会うことはなかった。 引っ越し当日の朝、雪奈は雅人とよく行った海岸に向かった。 そこで、この町との最後の別れをすることにしたからだ。 ようやくたどり着いた雪奈の目には、海を見つめて座る、一つの人影が映った。恐る恐る近づくと、その人物は振り向いて微笑んだ。
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