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秋穂と出会ったのも、この公園だった。
ちょうど一年程前の事。
その日の夕暮れ時、俺は経営しているバーに向かう途中だった。
俺は近道をする為に公園の中を横切ることにした。
噴水広場を通り過ぎた所で一人の少女がフラフラしているのを見つけた。
真っ黒い喪服を着た高校生ぐらいの少女が、前方に両手を上げながら歩いている。
足取りはふらつき、今にも転びそうだ。
よく見ると彼女は目をつぶったままだった。
始め、俺は頭のおかしい奴と思い、そのまま通り過ぎようとした。
しかし、少女はそのままもつれる足取りで、大広場に続く長い下り階段に近付いて行っていた。
俺は驚いて、急いで彼女に駆け寄った。
「危ない!」
「キャ」
落ちるすんでの所で腕を掴んだ。
『あー…。良かった間に合った。』
俺は腕にすがりついている少女に向かって怒鳴った。
「何考えてんだ!あぶねーだろ。」
「ご、ごめんなさい」
「大体なぁ、目閉じてちゃ…………」
少女の顔を見て、俺は息を飲んだ。
………美しい。
「…………。」
俺は何も言えなくなって、少女の顔を見つめた。
つるりとした綺麗な肌は恐ろしく白くて、透けてしまいそうだ。
つぶっている瞼に生える睫毛はとてつもなく長い。
「すいません、私」
謎の美少女は尚も目を閉じたままで、言った。
「目が見えないんです……。」
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