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その躯は海の匂いがした
首筋を舐めると潮の辛さに懐かしさを覚える
還ってきた…
石膏の白さと硬さに汗が滲み
その背中に胸を押しあて抱きしめてみる…
隙間のなくなった空間に溶けていきたい自分がいる
そしてかろうじて魚の形を留めた私は泳ぎだす
上になりながら…およぎだす
海が見える…
あのゲル状の生暖かく柔らかい海…
沈みこむと息ができず
それでいて包み込むような…
独りで泳ぎ疲れた頃
躯を投げ出し底へと沈み
ただ波間に身をまかせ満つる刻を待つ…
よせてはひいていくあの波に…
すべてが終わり眠りについた頃
人知れずこの思いは海の泡となり消えて‥いく…だろう
そして…
陸に上がった私は
また声を無くしたまま生きる
あいしてる…
あいしてる…
あいしてる…
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