第一話   花一匁

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歌が   ーー・・・              聞こえる。         警鐘が歌をかき消すように頭でがんがん暴れ回る。        こすず   だめだそこは      誰?       「こすず?」 アヤが私の顔をみて眉根を寄せた。 「すごい汗、気分悪いの?」 マルゥも心配そうにきいた。 「いつも公園に近づこうとすると・・・気分が悪くなるの。 別に大丈夫よ。」 意地を張ったものの、全身から嫌な汗がじわじわ染みだしていた。 時折ぐらりと平行感覚を失う。     ぴと。     マルゥがひんやりとした手を私の頭に当てた。 長い袖から二、三本指を出しておでこに軽く三角を描いた。 「!?」 「おまじない。 だいじょうぶ、こわくないよ。 わたしがついてる・・・こわくない。」 じんわりおでこが熱くなった。 胸がとくんとくん・・・うわっもぅ顔が近い! 「こすずちゃん。」 マルゥが長い睫毛の奥から琥珀色の瞳でじっと覗き込んだ。 だ、だめ 私、また女の子にときめいてるってアヤにいわれちゃう。 「ありがとう!もういいっ」 飛ぶようにマルゥから離れてまた私たちは公園に向かった。       かってうれしいはないちもんめ                 まけてくやしいはないちもんめ       「歌、うるさいくらい聞こえる。」 私はガンガン揺れるあたまを押さえながら公園の注意札をまたいだ。 先に待ってる二人が振り返った。 「間違いないね、いるよ。」 マルゥは確証に満ちた台詞を吐いた。
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