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その言葉にリーヤが腹を立てた。
「何言ってんのよあんた!なんでルナが死ななきゃいけないのよ!」
先生は皺を寄せたまま答えた。
「簡単なことだ。一人のために全ての人間が不幸になるならば、その一人を殺せば幸せになる」
リーヤは拳を強く握った。
「ふざけんな!」
リーヤは先生に向かって殴り掛かろうとしたが、ルナが手を出し遮った。
リーヤは声を荒げた。
「あんたにルナの何がわかるのよ!ルナは……」
「リーヤ」
ハルトはリーヤの口を人差し指で塞ぐ。そっと指を放し、先生に言った。
「殺すなら別にいいよ。でも、あなたが私を殺せるとは思えない」
「舐めるなよ。外道魔法使いめ」
風が先生の周囲に吹き始めた。生徒達はハルトを除いた全員が避難する。
ハルトは一人その場に立ち尽くしルナを見ている。
何故逃げないのか、ハルト自身さえわかってはいない。
リーヤがルナから離れる。
「ルナ」
「問題ないよ。すぐ終わらせるから」
そう言い、ルナは先生の方に向き直る。
リーヤはハルトの肩に留まった。リーヤとハルト、生徒達は二人を黙視している。
張り詰めた空気が流れる。
風がルナのローブと髪を靡かせる。
校庭に咲く桜の花びらが散り舞う。
強風に紛れて、声が聞こえた。
それが先生の詠唱だとわかったのは、ルナだけだった。
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