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「……話を続けても構いませんか?」
「あ、ああ……」
「私達は落書きになった事により、管理者は私達を消してしまいます。死を用いて、実際には存在していなかったの如く、消却させられます。私の……兄のように……」
内藤は俯いて話を止める。
「兄のようにって……」
「貴方には妹がいたはず、過去に事故に遇い、亡くなったという記憶があるはずです」
確かに俺には妹がいた。
……家族皆で旅行に行って、交通事故に遇って、妹だけが死んで……。
「私の兄も交通事故で亡くなりました……旅行中に……」
俺は言葉が出なかった。
ここまでリンクしている事に。
本当に世界は繰り返している事に。
夢であってほしい。
くだらない冗談であってほしい。
笑って済まされるような……。
「……もう、私に時間はありません。貴方も感じ、知ってしまったのだから……。それに私が消えたら……」
――俺も消える。
本当に本当の話なら、そうなる。
「助かる方法は?」
「本の管理者になるでもしないと……」
「本の外に出られないのか?」
「出れる事は出来ますけど……でも、もう無駄です……助かる事なんて……」
俺は苛つき内藤の胸ぐらを掴み
「簡単に諦めてんじゃねーよ! 死ぬ運命だとしてもなぁ! 俺はあがいてあがいてあがきまくって死ぬ! ただ何もしなくて死ぬのは嫌いなんだよ! だからさっさと方法を言え!」
と叫んだ。
内藤は俺の手を振りほどき、俺と同じ音量で叫ぶ。
「あがいても無駄って分かってる事を何でするんです?! 無理に辛い思いをして、どうにでもならなくて、更に辛い思いをするんです! 諦めた方が楽なんです!」
……ちっ、考えを曲げるつもりが無い性格だけは俺にそっくりだ。
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