本編

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  雪解けの最中。 俺は体育館裏の桜の木の下に立っている。 桜は蕾を付け始め、もうすぐ春になろうとしている。 「やっぱりここにいた!」 「どうした? イサミ」 俺の惚けた言動にイサミは呆れ顔で言う。 「そろそろ卒業式が始まるから、呼びに来たんです」 「ああ、そうだったな」 「しっかりしてくださいよ、近藤さん」 「ったく、嫌味な女だ」 「嫌味で結構です」 イサミは俺を連れて、体育館前に戻ろうとしたが、立ち止まり 「あ、第二ボタン、後でくださいね、大助君」 と振り向いて、思い出したかのように言ってきた。 「はいはい」 俺は適当に返事をし、にこりとしたイサミの後についていく。 そう、この物語はまた動き出した。 イサミの出現によって、やっといつもとは違う感じになってきた。 ――世界は書斎の中にある本の数並に存在する。 決められているが、それぞれ違った未来。 存在する裏側の世界。 書斎の持ち主は神なのか、それとも本の中の住民なのか? それは永遠の謎だ。 でも、言える事は どの世界も一冊の本である事。 ただそれだけは言える。       完
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