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―…銀時 何時までも頭に響くソレを振り払うかのように銀時は走り出した。 それでも声は離れずに銀時を付きまとう。息を切らして万事屋の前まで来れば急いで階段を上がろうと手摺に手をかけたその時。 「銀時」 確かに聞こえた声、幻聴でも空耳でもなく… 「銀時」 もう一度、雨の音に混じりながらもハッキリと耳に届いた声にヒクリと肩を揺らせば銀時はゆっくりと後ろを振り返った。 「高…杉…」 振り返った先には元同士…高杉が紫の地に金色の蝶が舞う派手な単を身に纏い、自分と同じ様に傘も差さずに立っていた。 昔、愛し合った人物。 「何…何か用?」 「別に、お前に逢いたかった。それだけじゃいけねーか?」 口角を上げてクツリと喉の奥で笑う。何一つ変わらぬその姿に銀時は目を奪われそこだけ時間の流れが止まったかのようにその場に立ち尽くした。 雨の音も、高杉が近付いてくる水溜まりを踏む音も、全ての音が遮断され、思考も鈍り声さえ出ない。 瞳に映った目の前の男だけが徐々に大きくなり、ふと視界から消えたと思えば同時に強く、優しく抱き締められる懐かしい感覚。 「逢いたかった」 もう一度耳許で囁かれた言葉だけが頭に響き、お互いに濡れた冷たい筈の身体が触れ合った場所から熱が籠りドクドクと脈打つ心臓と共に体が熱くなる。 振りほどかなければと思う頭とは裏腹に体が言うことを聞かず、じわりじわりと広がる熱を感じて不覚にも心地良いと感じてしまう。
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