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かったるそうに部屋から出て来たのは四十代後半のおっさん。
スウェットに包まれた体を寒そうに揺らし和希の後に続いた。
「……はよう」
低い声で絞り出された朝の挨拶。
遅いよ、と笑いながら挨拶を返した。
早々に朝食を済ませ、コーヒーを飲み干しておかわりを作る。
『おかわりいる?』
「ん……あぁ」
テーブルから黒革のソファーに移りテレビをぼーっと眺めるおっさんは空のカップを突き出した。
『もちょっとかかるから置いとけ、新聞取ってくる』
「ん」
玄関で裸足にローファーを履き、ドアを開けて寒さに震えた。
エレベーターに乗り込み①と表記されるボタンを押す。
「お早うございます」
『おはよございまーす』
エレベーターに乗っていたのは三十代ご婦人。
如何にも金持ち、ワンピースを着ている。
「"管理人さん"、今お起きになられたの?」
『そんなもんすね。今ご飯食べた所です』
笑いながら談笑。
一階に着き、紅茶色の外車で走り去って行った。
ブランドものの車はありふれていて余り好かないそうだが、値が張る車を好むことに変わりはない。
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