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喧騒と野次馬、町警護の役人達の中心部
そこに、何故俺がいるのだろうか。
新手の嫌がらせか、それとも、神様とやらが、俺の人生の行く末が書かれた的を投剣で狙い撃ちしてるのか……只単に、俺の師匠が騒ぎを起こしているだけなのか……
「テメェ…俺を誰だと思って、イカサマだと言ってんだ?」
師匠の長い足を、尻から倒れこんでいる男の腹にかけている。どっから見ても悪人だ。
「ア…アア、アンタ何か知らねーさ。けど、アンタの手からカードが出てくるのを見たんだ!!イカサマをイカサマって言って何が悪い!!」
ナイスガッツ男。けど、良い判断じゃなかったよ。その手口は俺も何回も使われたヤツだ。
俺との勝負のときは、皿洗いを賭けた勝負だったから素直に教えてくれたものの、これは金が掛っている。簡単に師匠がイカサマを認めるはずが無い。その言葉は師匠を逆上させるだけだ。
「ほぅ…賭けに負けてた口が言う台詞がそれか……それがお前の遺言にしてやろうか!?」
「師匠ストップ!!それはいくらなんでもマズイですって!!」
「邪魔をするなコウ!!コイツはこの天才魔導士を侮辱したんだ!!来世で笑って顔を合わせられる様、今コイツを俺がぶっ殺す!!」
目がマジだ。本気で人を殺すぞこの人。間に割って入って止めた俺。
その時、俺と師匠がぶつかった拍子に、師匠の肩口が揺れ、長袖の服の袖が少しだけずれた。そこから、数枚のカードが舞い落ちた。
うるさいくらいに騒がしかった野次馬が、水をかけられた様に、耳が痛くなる程静かになる。
「あ……」
「……」
「……」
「や……やっぱり…イカサマしてるじゃないかー!!」
大声でこの空気を切り裂いたのは、師匠の足の下にいる男。
それはそうだろう。
イカサマしてるヤツから、もう少しで金と命を取られる所だったのだ。ここで黙ってる方がおかしいであろう。
「ちょっと君、そこまで来てもらおうか」
いつのまにか背後に回っていた役人が、師匠の肩に手をかけた。
とうとう牢獄行きですか、師匠……
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