命の制限

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町中の喧騒から数時間後 俺達がいる場所は、牢獄ではなく、町外れの街道。町外れと言っても、町からは相当離れている。 先程の町での事件は、師匠が魔導を使い、人々の動きをかいくぐって抜けてきたのである。 「師匠……イカサマでしか勝てないなら、賭け事は辞めてもらえた方が、俺と家計はとても助かるのですが」 「家計の半分は、俺の賭けで稼いでる様なものだ。弟子であるお前にとやかく言われる筋合いは無い。それに、イカサマはバレなければイカサマではないと相場で決まっている」 残りの半分は、俺の雇用や家事家計のやりくりで、なんとかしてるのだが…… 「バレなければって……今回はバレたじゃないですか。これに懲りたらもう辞めて下さい!」 「あれは、お前がぶつかって来たからバレただけのことだ。あれさえなければ、勝負は俺の勝ちになっていた」 「はいはい、そーですか。天才魔導士ルザンさんは、頭が良いから口も良くて、上手く丸めきれたんでしょうね」 「天才は何でも出来るんだ」 自分で言いやがったよこの人……しかし、俺の次の言葉で、この口喧嘩は更に悪化する。 「ま、゙自称゙天才魔導士のルザン、ですけどね」 実はこの人、自分で『天才』と言ってはいるが、巷の噂では『悪人ルザン』や『破壊魔導士ルザン』、『強欲のルザン』と、悪名ばかりが着いている。 「自称だと……?」 「そーですよ。悪名ばかり着いて、天才とは一言も言われた事無いじゃないですか」 確に、この人は実力は大したものなのだ。しかし、この性格が祟ってか、変なプライドばかりが前に出て、町中のゴロツキどころか、山賊や海賊、しまいには、国に関係する貴族にまで喧嘩を売ってしまう有り様。 それでも生きてるこの人の実力はかなりのモノだ。 「少しは世の為人の為って精神を持ってですね……師匠?」 「……レド…ア…」 何か小言を呟いている師匠……まさか……マズイ!! 「師匠……?まさか、弟子の俺に賢者クラスの魔導をするつもりじゃ……」 「数ある生命なれど…その命運尽きるとき…悪き魂は主の下へ還らん……」 師匠は、賢者クラスより下のクラスの魔導は呪文無しで発動できる…しかし、今は呪文を唱えている!! 「本気ですか師匠ー!!!?」 「還れ!!我が生命の父の下へ!!ホーリー・ドライブ!!」 白い光と閃光が俺の横を突き抜けて行った。マジで撃ちやがった……この魔導士……
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