ハンター誕生編

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 ギシギシと櫓が音をたてて小さな小舟は進んでいる。波紋が広がるだけで海はとても穏やかだ。  舟は1キロほど向こうに見える小島を目指し、島民たちの食料と物資、そして僕を乗せてゆっくりと潮風の中を進む。 僕の名はツカサ。2日前に今まで住んでいた島を離れ、新しい島でハンターになりたくて旅に出た。 本当は1年前に父が死に、村長さんの世話でジャンボ村に引っ越せる様に手配してもらったんだよね。 父は昔、ココット村の英雄と言われた4人の1人だって言ってた。【竜殺し】なんて称号を街の大老から貰っていたそうだ。 父は親友の死後から狩人をやめていた。 小さい頃は父に剣術を教えられたし、よくジャングルなんかに食材集めに連れて行かれた。 だからって訳じゃないけど、ハンターになりたいって思ったんだ。 船着き場に静かに小舟は止まり荷物の積み降ろしが始まった。 「着いたよ」 船頭は僕に愛想良く言ってくれたが、雑貨屋のおばさんに怒られながら荷物を降ろしている。 船着き場から少し坂を登ると村の広場に出た。水のあまり出てない噴水を中心に、小さな村はそれ相応に動いている。 「おっ!君だね」 鼻の高い気の良さそうな男が、僕に声をかけてきた。 「ここまで結構あっただろ?お疲れだろうから部屋に荷物でも置いてきなよ」 明らかにオノボリさんの僕に、彼は丘の上にある一軒家を教えてくれた。 こんな僕に一軒家を? 少し恐縮するが、とりあえず荷物を置いて、この村の見物だ。 広場に行くと、さっきの男が立っている。 「どうだい?この村は気に入ったかい?」 相変わらず気軽に声をかけて来る男。まだ歳は若いのに村長だと言うではないか。 「まぁまずは村に馴れることだよ。のんびりやりな」 驚きを隠せぬまま若村長の指示で、紹介所に向かった。 ハンターになるためには、街が統制するハンター協会に登録する必要があるそうだ。 「は~い!どんなご依頼の紹介ですか~」 この村には場違いなメイド服に口調。ハッキリ言って彼女は浮いている。 「いや…、ハンター登録を…」 そう僕が呟くと 「えぇ~!そうなの~、新米さんかぁ~」 がっかりしたのか、彼女は口にする。嫌々言ってはいるようだが、仕事はちゃんとやっているようだ。少し僕はホッとした。 「よぉ!君もハンターかい?」 振り返ると、全身甲冑に身を包んだ男が声をかけて来た。
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