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いかにも自身ありげなその男は
「わからない事があればなんでも聞いてきたまえ…」
今日、ハンターデビューの僕は知らない事ばかりだ。もう少し馴染んだら聞く事にする。と答えると、男は
「新米くん、頑張って私に追い付いてくれよ!ハハハ…」
と言って去っていった。
若村長に早速仕事を貰おうと話しをすると、僕の腰に刺した片手剣を見て、そんな錆びた刀じゃダメだと鍛冶屋を紹介してくれた。
鍛冶屋には背の低い小さなお婆さんが1人、退屈そうに大きな窯の火を見ている。
僕が声をかけると、お婆さんは飛び上がる様に喜び、僕の元へ駆け寄ってきた。
「おやおや、めずらいしねぇ、お客さんかい?」
僕が若村長との経緯を話すと、お婆さんは僕の片手剣を手に取り
「ほぉ…なかなかの名刀じゃな…」
その片手剣は父が使っていたものだ。
「じゃが…素材が少し足りんなぁ…」
新米ながらもハンターなので素材集めは任せてほしい、と言う僕に
「まだ、あんたには無理じゃよ…その代わり、良い物見せて貰ったお礼に、このナイフをお前さんにあげよう」
お婆さんが渡してくれたナイフは、ハンターナイフって片手剣の初歩。今の僕には十分か…
鍛冶屋のオババに礼をつげて、若村長の依頼で、食材屋のオバサンが生肉を欲しがっているそうだ。
さっそく密林で草食獣の肉を収集する。
船着き場から僕は小舟に飛び乗り密林へ向かった。
蒸し風呂のような湿気が身体に巻き付き、虫や鳥の声がなり続ける。ハンターの生活はこんなものだと判ってはいるが、少し気持ちが折れそうになる。
密林の中を茂みをかき分け進むと、アプトノスの群れが美味しそうに草を食べている。
僕が側に寄り添い、手で触れようが逃げる気配はない。
気の優しい草食獣を手にかけるのは心苦しいが、ハンターとして生きて行くのだ。
すまないが…心を鬼にして白く輝くナイフをアプトノスに突き立てる。
低い悲鳴をあげながら逃げようとする。周りの草食獣は気配を感じ、逃げるもの、尾を振り抵抗するものがいたが、そんな事に動じている暇はない。
必要に連撃を叩き込むと、魚が跳ねるかの様に手足をバタつかせ動かなくなった。
腰に携帯した小刀で直ぐさま生肉を剥ぎ取る。
これで食材屋のオバサンも喜ぶだろう。
小舟のあるベースキャンプに戻る途中、背中を覆うような雄叫びが密林の闇から聞こえる。僕は突然の事に身体をビクつかせ振り返った。
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