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時計の針が10時を打った。
外はもう闇で覆われている。
室内は規則正しく進む秒針の音と、時折ページをめくる時にでる、紙の擦れる音しかしなかった。
「母さん遅いな……なにしてんだろ?」
健人は読んでいた小説を置いて、携帯で母親に電話をかけた。
――おかけになった電話は、現在電源が切れているか、電波の届かない場所にあります。おかけになった……
「全く、何やってんだよ」
健人は悪態をつきながら電話を切った。
――ピンポーン
その時、玄関のチャイムが鳴った。
「母さんかな?」
健人は玄関へと向かった。
――ピンポーンピンポーンピンポーン
健人が玄関まで歩く間もチャイムは鳴り続けた。
(鍵忘れたのかな?)
健人は不審に思いながらも、ドアを開いた。
ドアの前に立って居たのは母親ではなく、スーツ姿の小さな男だった。
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