第一章

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「あ、あの……どちら様でしょうか?」 健人は、自分より背が5、6cm低いながらも、全身黒づくめである男の異様な雰囲気に不安を覚えた。 「谷原健人様ですね?わたくし、こういう者です」 そう言って、男は一枚の名刺を差し出した。 「黒髭カンパニー営業部、加藤重彦?」 聞いたことの無い名前と会社名に、健人は少し戸惑った。 「加藤さんが俺のうちに、なんのご用ですか?」 「ただいま、わが社では新製品の訪問販売をおこなっていまして……」 その時になって、ようやく健人は男がセールスマンであることに気付いた。 暗くて気付かなかったが、男の足元には商品を入れていると思わしき、シルバーのアタッシュケースが一つ置いてあった。 「すみませんが、今両親は出掛けているので……」 健人はそう言って、玄関のドアを閉めようとした。 しかし 「待って下さい、私は貴方に用があるんです」 予想外の言葉に、健人の動きが止まった。 「どういう事ですか?」 「貴方、消えて欲しいと思う人がいるでしょ」 男の突然の一言に、健人は衝撃をうけた。 「………な、なんの事ですか?」
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