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「あ、あの……どちら様でしょうか?」
健人は、自分より背が5、6cm低いながらも、全身黒づくめである男の異様な雰囲気に不安を覚えた。
「谷原健人様ですね?わたくし、こういう者です」
そう言って、男は一枚の名刺を差し出した。
「黒髭カンパニー営業部、加藤重彦?」
聞いたことの無い名前と会社名に、健人は少し戸惑った。
「加藤さんが俺のうちに、なんのご用ですか?」
「ただいま、わが社では新製品の訪問販売をおこなっていまして……」
その時になって、ようやく健人は男がセールスマンであることに気付いた。
暗くて気付かなかったが、男の足元には商品を入れていると思わしき、シルバーのアタッシュケースが一つ置いてあった。
「すみませんが、今両親は出掛けているので……」
健人はそう言って、玄関のドアを閉めようとした。
しかし
「待って下さい、私は貴方に用があるんです」
予想外の言葉に、健人の動きが止まった。
「どういう事ですか?」
「貴方、消えて欲しいと思う人がいるでしょ」
男の突然の一言に、健人は衝撃をうけた。
「………な、なんの事ですか?」
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