第一章

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健人は愛想笑いを浮かべたが、顔が強張っていることが自分でもわかった。 「電車の中でも電話をしていたOL、煙草のポイ捨てをしたサラリーマン、学校でイジメをしている同級生……消えてしまえばいい、そう思ったでしょ」 健人は驚きで声が出なかった。 なぜこの男は自分の行動・情動を知っているのだろうか。 仕方なく、健人は開き直って言った。 「ええ、確かに思いましたよ。でも、それは悪い事ですか?頭の中で考えるだけなら、その人の自由でしょ」 屁理屈と言われてしまえばそれまでだが、健人は一番素直な気持ちを加藤にぶつけた。 「……思うだけで、いいんですか?」 「は?」 全く意図しない答えに、つい気の抜けた声が出てしまった。 「どういう意味ですか?」 「ですから、思うだけで、想像するだけで良いのですか?と聞いているんです」 健人は余計に混乱した。 「詳しい事を聞きたいですか?」 加藤はニヤリと笑った。
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