第二章

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健人は湯飲みに麦茶を入れ、リビングへと歩いて行った。 「……お茶です」 「あ、どうも。ありがとうございます」 椅子に座っている加藤は、ニコニコ微笑みながら答えた。 健人はテーブルをはさんで加藤の反対側のソファーに座って言った。 「さっきの言葉の意味を教えて下さい」 「思うだけで、想像するだけで良いのか?という話ですね?」 「はい」 健人が答えると、加藤はシルバーのアタッシュケースを取り出した。 「そういえば、ご両親遅いですね」 「何か不都合でも?」 「いいえ、むしろ好都合です」 まあ、確かに両親がいればこんな胡散臭い男を家になんか絶対あげないだろう。 「今日は仕事で遅くなると母から電話がありました」 この男を家にあげたあと、母親から電話があった。12時頃までかかるらしい。 「いつもこんなに遅いんですか?」 余計なお世話だ、と健人は思った。 しかし10時半を回っているのに、高校生とはいえ息子を一人にしておく家は珍しいだろう。
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