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もともと健人の家は共働きなので、両親の帰りが遅くなるのは珍しい事ではない。
さらに、健人が高校生になったと言うことで、もう心配しなくても大丈夫と思ったのか、母親の帰りは今までより少し遅くなった。
しかし、こんなに帰りが遅くなったのは初めてだ。
「失礼ですが、お父さんはなんの仕事をしておられるのですか?」
「……貿易会社ですけど」
「会社名は?」
「エクゼスです」
エクゼスは貿易会社の中でも、かなり大手の会社だ。
エクゼスへの入社は、狭き門とされている。
その為、健人は父親をとても尊敬している。
「それはスゴイ!でも出張が多くて大変でしょ」
「まあ、父にはほとんど会えないですね。今日も、朝から泊まりこみの出張に行っていて……」
健人は話がズレていることにようやく気付いた。
「……すいません、話を元に戻したいんですけど」
「ああ、これは申し訳ありません」
そう言って加藤は、テーブルの上に出していた、アタッシュケースの蓋を開けた。
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