第二章

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もともと健人の家は共働きなので、両親の帰りが遅くなるのは珍しい事ではない。 さらに、健人が高校生になったと言うことで、もう心配しなくても大丈夫と思ったのか、母親の帰りは今までより少し遅くなった。 しかし、こんなに帰りが遅くなったのは初めてだ。 「失礼ですが、お父さんはなんの仕事をしておられるのですか?」 「……貿易会社ですけど」 「会社名は?」 「エクゼスです」 エクゼスは貿易会社の中でも、かなり大手の会社だ。 エクゼスへの入社は、狭き門とされている。 その為、健人は父親をとても尊敬している。 「それはスゴイ!でも出張が多くて大変でしょ」 「まあ、父にはほとんど会えないですね。今日も、朝から泊まりこみの出張に行っていて……」 健人は話がズレていることにようやく気付いた。 「……すいません、話を元に戻したいんですけど」 「ああ、これは申し訳ありません」 そう言って加藤は、テーブルの上に出していた、アタッシュケースの蓋を開けた。
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