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帰る前にシーアが一つだけ聞きたい事があると言った。
その質問の内容はどうして、タルトの具材が一種類だけだったのか。
だから私はその子から聞いた言葉をそのまま彼女に告げた。少女が言ったのはただ一言。
ーー私の友達がそれを好きだったんです。
私は思う。多分、彼女の友人も喜んでいるだろう。
あの“杏子”は本当に美味しそうに輝いていたのだから。
◆◆◆
二年、五十一日
今日、長い間不自然だったシーアから、その理由を聞かされた。
何と、彼女は子供を授かったらしい。相手は書くまでもなくジョモーさんだ。
赤い顔で、今まで自分がこの事を黙っていた理由を述べあげて、僅かに膨らんだお腹に触らせてくれたりした。
私はただおめでとうとだけ口にして、母胎に悪いからとそこまで心配せずともいいのにと話す彼女を馬車に押し込んで屋敷と戻させた。
これはどの生物でも同じだが、子は宿ってから産まれるまでにそれなりの期間がかかるのが道理。
さて、あの二人の子が産まれるまで、先走って家が壊れんばかりに買い集めてしまったこの遊具達を一体どうしようか。
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