英雄帰還

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古来より、人は異形のもの達と争い戦ってきた。 永らく均衡を保ってきた両者だが、ある日を境に状況が急転する。 最悪の魔力を誇り、その力を持って全ての異形を従属させた魔王が四天王と呼ばれる異界の最上位悪魔を率いて現れたのだ。 世界の国々は次第に異形の軍勢に押され、なすすべなく敗北していった。 しかし、皮肉にもそれが人々の心を一つにまとめ、ついに人間達はその状況を打開するために全面戦争に踏切った。 その戦いは熾烈を極めたが、人間側の勇者『ロイ・アーシェル』が魔王を打倒し、ついにこの両者の間に決着がついたのである。 「と言う訳です。分かったかな~?」 はーい、という子供らしい声がばらばらに叫ばれる。 俺の名前はジョモー。旧アルテナ公国一番歩兵隊一兵卒に所属していた元軍人である。 あの華々しい全面戦争にも参加して生き残った。 しかし、今ではアルテナ公国は解体。代わりに統一国家『ルーシェンス』が作られた。 そして、今日はその記念すべき建国式であり、街中が活気に満ちあふれている。 「よしっ、じゃあお待ち兼ねのパーティーだ!みんな、食べていいぞ~」 そういうと、行儀良く座っていた子供達が我先にとテーブルに所狭しと並ぶ料理の数々へと駆けて行く。 その様子を見ながら、俺は微笑む。 ここは、街に幾つもある孤児院の一つで俺の育った場所でもある『止まり木』という孤児院だ。
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