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「ん?シナちゃん、どうしたの?」
「…ムーの唐揚げ…最後、だから…ジョモーさんの分…」
そういって、俺に皿に乗った美味しそうな唐揚げを差し出すシナちゃん。
机の方を見ると、まるで嵐が通ったような後のような状況が作り上げられていた。
げに恐ろしきは子供かなって感じだなぁ。
そんな中、一つの皿だけが空っぽになっている。衣が残ってるからあれが唐揚げの皿だったんだろう。
「シナちゃんありがとうな~、お兄ちゃん嬉しいよ」
そう言いながら、シナちゃんの頭を撫でてあげる。
そのちっちゃな頭は俺が撫でる度にぐらぐら揺れる。
「あら、良かったわね~!お兄さんに頭撫でてもらえて」
ターナが横から加わると先程よりぐわんぐわんと頭が揺れる。
そのまま、シナちゃんは顔を真っ赤にして俺に皿を差し出す。
二つのった唐揚げのうち一つをつまんで食べる。
「美味しかったよ、ありがとうね?…あ、そうだっ」
俺はポケットの中に飴があったのを思い出して、それを取り出す。
「これは美味しい唐揚げを持って来てくれた御礼な?内緒だよ?」
そう言って、包み紙に包まれた飴を何個か、ちっちゃな手の平に乗せてやる。
それを見ると、すぐさまそれを抱えて自分の部屋に帰って行った。行く前に微かな声で『ありがとう…』と言ったのが聞こえた。
「あらあら、あの飴も彼女の宝箱の中の一員ね。」
「ん~、俺としてはちゃんと食べて欲しいんだけどね」
そう笑いながらいうターナ。
ふと、時計を見るとそろそろ『お迎え』が来る時間になったみたいだ。
「じゃあ、そろそろ行きます。子供達にもよろしく言っといてな?」
「ああ、行ってらっしゃい…。ここは貴方の家なんだから、いつでも帰って来るのよー」
「あ、本当に今日はありがとう御座いました!」
二人に見送られ、俺は後ろ髪引かれる思いでその場を立ち去った。
外にでると案の定、ちょうど迎えの馬車が来ていた。
俺は溜め息を吐きながら、降りて来る人影を待った。
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