英雄帰還

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「おや、時間はちょうどよかったみたいだね?ジョモー君」 「いやいや、早すぎますよネクタル様。後、12時間後ぐらいに来てくれればちょうど良かったんですが。」 皮肉を返す俺に笑いながら歩いて来る、青年。 この人は見た目18歳ぐらいの青年に見えるが、本当は200を越える大じじ様である。 名前はハーシュ=ネクタル候。元アルテナ公国の参謀長官であり、稀代の魔法使いでもある、天才だ。 「いや、全く君は本当に面白いね~!」 俺といるときはいつもこんな感じでニコニコとしている。何がそんなに面白いんだかね? そもそも、なんでそんな偉い人と俺が知り合いなのか?別に対したことはない、ただ戦争中に普通に彼の作戦に文句をつけて、普通に殺されかけただけだ。…詰まる所、俺にもなにがなんだか良く分からないんだが、それ以来向こうからことあるごとによく関わってきたりする。 「まぁ、時間もありませんし行きましょうかね、我らが王の御所へ…」 馬車に揺られながら、流れ行く外の世界に意識を向ける。 人々が皆、騒ぎまるでその命を燃やし尽くそうとしているかのようである。 「ほら~、ジョモー君?外ばっかり見てないで、中に話し相手がいるのに失礼じゃありませんか~」 言ってる言葉に反して、顔は仮面でもかぶっているのかと言いたくなるくらいの笑顔だ。 「確かに。これは申し訳御座いませんでした、ネクタル様。」 俺がそう毅然とした態度で返すと、先程まではとれないとまで思っていた笑顔が一転、ツマらなさそうなものに変わる。 「ふ~ん、僕達との間に線引きをする積もりなんだ君は…?」 ネクタルはその蛇のような目で俺を観察するように眺める。それは彼が戦闘の時にいつも相手を見る時の目に近いものがあった。 「線引き、とおっしゃいますか? 元々、私と貴方では御身分に大きな差があるのですが…」 普通の、いわゆる一般常識的な話し方に他ならないのに不機嫌になられるのは困る。 「んー…、僕はそれだけじゃあない気がするんだけどねぇ…?」 そう言って、ニヤリ?いやニタリと俺を見やる。 何故だか、背中に悪寒が走る、嫌な視線だ。 「ほら、何と言いますかぁ、TPOって奴ですよ!今は御者もいらっしゃいますし…!」 「それなら、問題ありません。彼は僕の使い魔ですから♪」
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