プロローグ

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左右にずらりと並んだ兵士たちの視線は全て俺に向けられている。非常に不愉快な気分だが、今はそんなことどうでもいい。 俺たち四人が立ち並んでいるのは、玉座に座って長々と話をしている頭に王冠を乗せた髭面の中年男の目の前だ。言うまでもなく、この国の王である。 俺の右隣には地震でもないのにガタガタ震えている少年がいる。誰もが王を前に緊張しているのだろうと勘違いしそうだが、はっきり言ってそれはない。こいつは王に与えられるであろう何かの使命を前に臆しているのだ。 そいつの右隣では少女が嬉しそうな表情で周りを見回している。城の中が珍しいんだろうか。こいつは臆している様子はないが、王の話は全く聞いてなかった。俺も人のこと言えないけどな。 俺の左隣には憎たらしい女が王の話を真剣に聞いている。こいつは誰から見ても俺たち四人の中で唯一の常識人に見えるだろうが、騙されてはいけない。実は変わった思考を持った変人なのだ。俺も人のことは言えないが、こいつにだけは言えるという確信を抱いているつもりだ。 さて。俺たちがどうして王の前で話を聞いてやってるのか。それを語るには少し過去に遡ることになる。そんなに前ではない。あれは一週間ほど前の話だ。image=347592482.jpg
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