野田あずさ

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その日のうちにハンカチは洗って干し、翌日にはきちんとアイロンをかけてから鞄に仕舞った。 男の子の事をこんなに考えるのは、多分初めて。 私の頭の中は、恵ちゃんの事ばかりだから。 早めに登校して、普段用事の無い一年と二年の階に寄り道する。 教室にちらほらと生徒は居るけど、昨日の彼は見当たらない。 制服が同じならまだしも、違う制服で休み時間に来るのは流石に恥ずかしい。 だから早朝を選んだのだが…失敗だった。 隣の校舎の二階から校門を観察したけど彼は見つからず、そうこうしているうちに一週間があっという間に過ぎ去った。 「あずさ、最近何かやってるの?」 委員会で忙しかった恵ちゃんと食べる、久々の昼食。 「やってないよ。どうしたの?」 「最近早く来てるし、帰りもすぐに出ていくでしょ?」 男の子を探してるなんて言えない。 言えば変な誤解を産んでしまいそう…。 だけど恵ちゃんは凄く勘が良いから、すぐにばれてしまう。 言わなかったら嫌われてしまう? 二つを天秤にかけた結果、私は最初から素直に話す事にした。 「そんな事があったんだ…」 「ん。だからハンカチ返したいんだけど…」 「手伝おうか?」 …この時、何故か私は恵ちゃんの申し出を断った。 あの男子が恵ちゃんを好きになるのが嫌だから? 助けてもらって美化されてるだけだろうけど、あの男子は中々かっこよかった。 あの男子ではなく、恵ちゃんが男子を好きになったら…あの日見た光景が逆転する気がしたから? 自分でも何故か分からないまま、男子探しは続いていた。 冬服から夏服に変わる頃には観念して、私は恵ちゃんに泣きついて人探しを手伝ってもらう事にした。 何ヶ月も前の出来事だ…人手が二人になった所ですぐに見つかる訳がなく、私たちは何日も校内を歩き回る事になった。 私はもう諦めかけていたのに、恵ちゃんの方が意地になって探しはじめた。 それが夏休み前の話し。
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