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夏休みの登校日。
クソ暑い炎天下の中、学校の校門には沢山の報道カメラやアナウンサーが待ち構えていて、帰宅する生徒に次々に声をかけている。
局は違うのに質問内容は皆同じ。
「谷口広君はどんな子でした?」
知らない奴等やめんどくさがる奴等は「あまり話した事がないので…」と足早に通り過ぎるが、そんな奴等は少ない。
声をかけられたほぼ全員が美化された思い出を思い返しながら答えていく。
「明るい子でした」
「生徒会長で、とてもしっかりしていました」
「優しい子でした」
「とても気がきく子でした」
遠くから聞こえるそんな声を聞きながら、温くなったジュースを一気に飲み干す。
通り過ぎていく生徒の波の中、俺に気付いた友人が足を止めて不思議そうに見つめる。
「祐樹、帰らないのか?」
「あれがうざい」
「広のだろ?答えてやれよ…お前親友だったろ?」
哀れみの籠った瞳で見つめてくる友人に溜め息をつきながら、重い足取りを一歩、一歩と進める。
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