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「あ、ちょっとすみません」
足早に通り過ぎようとしたけど願いは叶わず、アナウンサーが俺達に声をかけマイクを向ける。
「君は亡くなった広君と仲が良かったのかな?よかったら話を聞かせてもらいたいんだけど?」
「貴方に話す気はありません」
そう言いたかったが、俺よりも早く
「こいつは広と親友だったんですよ」
と、返事をする友人。
余計な事をと睨めば「いいじゃんか」と笑って肩を叩かれ、こいつの一言に反応したカメラが一斉に俺に向き、少しでも声を拾おうとマイクが向けられる。
「君は広君と親友だったんだ」
「広君はどんな子でしたか?」
「何か声はかけましたか?」
「犯人に何か言いたい事はありますか?」
「この事件についてどう思いますか?」
一斉に浴びせられる質問。
どれもこれも俺にとってはうっとおしい。
止まっていた足を再び動かし、質問を繰り返す奴等の声を俺は無視して歩みを進める。
「あっ!!ちょっと!!」
「あんたらさ、うぜぇんだよ」
向けられたマイクはどんな小さな声でも拾う。
カメラのレンズに映るのは、俺の見下した笑み。
しんと静まり返る校門…。
数多くの視線が俺に集まる。
真剣なもの、呆れたもの、怒ったもの…。
一歩踏み出せば自然と人が割れて道が出来る。
皆、俺に触れたら疫病か何か移るんじゃないかと言うくらい、素早く道を明け渡す様子が面白くて自然と口元が歪む。
校門を抜け、暫くすれば凍り付いていたその場から気を取り直し、インタビューを続ける声、友達との話し声、俺の行動を話す声…数多くの声が聞こえる。
段々遠ざかるそれを聞きながら、俺は目的地へと歩みを進める。
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