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「あずさはいつも元気でいいね」
「悩みなんて無いでしょ?」
皆口を揃えて言う言葉。
嬉しいの半分、嫌なの半分。
私だって元気ない時だってある。
悩みだって沢山ある。
でもそれを見せると、皆私を暗いとか何とか言って相手にしないじゃない。
だから無理してでも明るく振る舞うしかない。
虐められるのはもう嫌だから…。
そんな中で、ちゃんと私に気付いてくれたのは恵ちゃんだけだった。
私にとって恵ちゃんは大切な親友で、大切な…私だけの女神なんだ。
「あずさ」
「はへ?」
「聞いてなかったでしょ?」
「…あぃ」
しょうがないなぁと笑いながら、また最初から問題の説明をしてくれる。
説明の時に話してる場所を指でなぞるのが恵ちゃんの癖。
それを眺めるのが私の密かな楽しみ。
恵ちゃんの指はすらっとしていて凄く綺麗。
恵ちゃん自身もかなりの美人さん。
(恵ちゃんは笑って違うと言うけど)
「けーちゃん」
「何?」
「ここもう一回、説明ぷりーず」
「はいはい」
私と違って大人っぽく…それでも可愛い笑い方をする恵ちゃんと居ると、私も自然に笑える。
「恵ちゃんは可愛いねぇ」
「だから人の話しを聞きなさい」
「聞いてるよー」
「なら次の問題解いてみなさい」
「えっ!?…スミマセン…」
素直に謝ると、恵ちゃんは私の頭を撫でながら悪戯っぽく笑う。
恵ちゃんになら子供扱いされても構わない。
触れられる事自体が嬉しいんだから…。
そんな事を感じていた高校三年の春、進路調査という一枚の用紙を先生から渡され、私は家でも学校でもずっと悩んだ。
出来ることなら恵ちゃんと一緒の進路になりたい。
恵ちゃんと離れるのは嫌。
でもずっと付き纏って嫌われるのは、もっと嫌。
「進路、どこにしたの?」
そう聞いて、私も同じだよと言ったら恵ちゃんは信じてくれる。
でも「専攻は?」とか、「何がやりたい?」とか聞かれたら…私の薄っぺらい言葉が崩されてしまう。
結局恵ちゃんに言葉がかけられず提出期限となってしまい、私は白紙のままそれを提出した。
そして当たり前だが、担任の呼び出し…。
渋々職員室に行き、先生に声をかける。
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