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クラクション、「危ないっ!!」と言う人の声、ブレーキ音…。
そして私達が今座っているのは、車道と歩道を分ける白線の上。
飛び出したのだ…車道に。
そして彼に腕を引かれ、助けられた。
理解とともに怒りや混乱が支配していた体を、じわじわと恐怖が侵食する。
「わ…私……っ、わた…」
ぽふん
恵ちゃんより少し大きな手が私の頭に乗っかる。
恐る恐る視線を上げると、目に映るのは少し困った顔の男の子。
「怪我ない?どっか痛いとか…」
「う…ううん……大丈夫…」
「そっか。なら良かった」
太陽のような笑顔…そんなの小説の中だけの表現だと思ってた。
でも、目の前にあるのはそんな笑顔。
気が緩んだとたんに涙が溢れ、彼は泣きじゃくる私を抱きしめて頭を撫で続けてくれた…。
「送るよ」
歩道に移動し、私が泣き止みかけた頃にそう言われて素直に頷く。
男の子と並んで歩くのなんて初めてで…何も私は話せなかった。
お互い無言のまま住宅街を歩いて家の前に着く。
「ありがとう…送ってくれて」
「いえいえ。どっか痛かったら病院行ってね?」
「うん。あ、ハンカチ…洗って返すね。えっと…学ランってどこの学校?」
「同じ学校だけど?」
「あ…」
そうだった…学校名が変わり、今の一、二年と三年では制服が違うんだ。
「じゃあ教室に返しに行く。どこ?」
「ヒミツ。それは返さなくていいよ。どうしても返したいなら…」
俺を見つけて?
…この男子は何でそんな台詞をさらりと言えるのか。
呆れもあったけど何だか可笑しくて…私は「分かった」と頷いた。
「また明日」
「また明日」
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