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「おじいさん…今の…。」
爽は体を震わせて、ホームレスに言った。
「500円玉?」
ホームレスは、自慢するみたいにそう言った。
「そうそう!見た!?瞬間移動したよな!?消えたよな!?」
………爽はホームレスのおじいさんが取ったという事に
気付いていないようだ。
物が瞬間移動するわけないのに
瞬間移動したと思っている。
その有り得ない現実が目の前で起こったという恐怖で
体を震わせていたのだ。
決して、取られて悔しかったのではない。
………ホームレスは「え!?」と声を漏らしてしまった。
ホームレスは爽が悔しくて体を震わせていたのだと思っていたのだ。
ホームレスはなんだか虚しくなって、
手に持っていた500円玉を強くにぎりしめ、
「そうだな。」
と、だけ爽に言い、その場をあとにした。
爽は呆然と道に座り込んでいた。
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