恋しくて

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 日番谷は黙々と食べ終わると、無言で松本をうながした。 「そんなに慌てなくてもいいじゃないですか」  松本が食べ終わるとすぐに日番谷は立ち上がったのだ。 「いいから行くぞ」 「はぁーい」  松本は名残惜しそうにお酒を一杯呑むと立ち上がった。 「ありがとうございましたー」 店員の声を背に店を出た二人。 日番谷は無言のまま歩きだした。 それに松本はついていく。 (どうしたのかしら。隊長……そうだ) 「冬獅朗さん♪」 わざと明るい声で名前を呼んでみる。 が、反応はなかった。 (うーん。つまんないの) そう松本は思っていたが、路地に入った所で日番谷の足が止まった。 (? どうしたのかしら) 「そこに座れ」 日番谷は樽を指さした。 「?」 松本は言われている意味がわからなくてきょとんとした。 「いいから、座れ」 松本は樽の上に腰掛けるとちょうど日番谷と視線があった。 いつもは見下げている松本は真剣な眼差しの日番谷にドキドキしていた。 日番谷のほうもいつもは見上げているのたが、こちらは余裕があった。 (視線が同じだとまた違うな……) 日番谷はぐいっと松本の顔を自分のほうに引き寄せるとキスをした。 これに驚いたのは松本だ。顔を真っ赤にしている。 それを日番谷は真剣に見つめる。 ますます松本は耳まで真っ赤にして困ってしまい、うつむいた。 (おもしろい) 日番谷はにやりといじわるな笑いを浮かべた。 が、松本は見えていない。 (さて、どうしてやろうか……) 日番谷はなかなか顔を上げない松本の耳元でささやいた。 「乱菊」 体がぴくりと動いた松本だった。 (わ、わ、わ) さらに日番谷は耳元でささやいた。 「隊長のいじわる~~~」  何をささやいたかは二人だけの秘密。 終わり。
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