第一章 マッドサイエンジェル

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「えっと、これにサインしてもらいたいのは明日香ちゃんでなく、明日香ちゃんのおとーさんの方」  市内発砲許可に市内危険薬品購入許可……? 「この許可をもらいに行くといつも窓口で断られちゃうんだよね」  あのなりでこんな危険な許可を貰いにいけば断られて当然だろうな。 「いいですとも、サインなぞ好きなだけ差し上げますよ」  親父は、あっさりと許可書にサインをし自ら提出するとまで言い出した。 「まさか、絵瑠ちゃん先輩これだけに俺を入部させたんですか?」 「えっと、初めは普通に部員が欲しかったんだけど、明日香ちゃんのデータを見たとき市長の息子って設定だったから、一石二鳥を狙って……」  一石二鳥と言うか、我が妹も懐柔したから三鳥あたりやらかしたかもしれない。 「まあ、明日香ちゃん、世の中、カネとコネだよ。それでね、明日香ちゃんいきなりの部長命令だけど……今夜泊めてくれないかな?」 「……はい?」 「あたし、普段は部室の脇の部屋に住んでいるんだけど、こんな時間に三輪原付なんか転がしていると……その……補導されちゃうし」  この時間、普通の高校生が原付を転がしても別に問題はないが、絵瑠のなりだと補導されてしまうな。 「泊まると言われても……」 「んーかまわんよ」 「寝るときは、あたしの部屋だね、絵瑠ねぇ」  俺が投票を棄権しても、賛成票が2票入って決まりって状況である。 「いいみたいですよ、絵瑠ちゃん先輩」 「ありがとう明日香ちゃん。なんだか思惑がうまく行きすぎてお腹空いちゃった」  俺は、未だに夕飯の準備をしていないことを思い出した。 「じゃあ、今すぐ夕飯作ります」 「もう、あにぃ遅すぎだよ」  こうして、俺は、不思議なちっこい先輩“本郷絵瑠”の部活、近未来科学部に入信することになってしまったのである。
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