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階段を一段、二段…六段上がってから三年生の女の子が言った。
「行けるよ。ほら…」
「だって、先生が行っちゃダメだって…」
そんなことない。
今までだって何度も…
ジャリン
体に何か引っかかった。
前に行けない。
私を止めているのは重たそうな鎖。
それが二階に行けないように、一本、壁と壁の間を繋いでいた。
そしてそこに木の板が一枚。
先生の文字で書かれていた。
『二階に行っては行けません』
「何?これ…」
「ずっと前に事故があったから行けないんだよ?」
「事故?」
「うん。お母さんが子供だった時からだって。京子ちゃん、こっちに行こうよ!」
振り返って女の子を見ると、嘘をついてるとかそんなことは言っていない顔だった。
「さんじゅうはち、さんじゅうく…」
「ね、早く」
笑って言うその子に私はとりあえずついて行くことにした。
階段を下りて、もう一度あの板を見た。
変わらない。
そこにずっとあるみたいに。
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