押し寄せる憂鬱

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母の話はいつも金銭トラブルの問題だ。幼い頃から金銭トラブルを抱えていてとても苦労したが、そういう癖は父と離婚した今でも治らない。   「いい加減さぁ、きちんと計画性持つようにしたら?」   「分かってるよ、でも……」   「でも、じゃなくて」   頼りない母親に、何十回と言い続けた説教を繰り返す。親が離婚した時私は父側に、姉は母側に別れ、家族バラバラになって相当苦労したのだが、我ながらグレもせず真っ直ぐ育ったものである。今では姉の自慢話に母の人生相談まで聞いているのだから。私は頭痛のせいかぼぅっとしていたので、自分が話している内容も頭に入らずぼんやりとそんな事を考えて、やがて思考を止めた。過去にはろくな思い出がない。思い出すだけ、不快だ。     何をどれだけ話したのか、多分いつもと同じ説教をつらつら並べただけだろう、そんな頃に俊輔が帰宅した。母は帰ってきたことを知るとそそくさと電話を切った。やはり少しの恥じらいは残っていたんだろう。   「誰かと電話してたの?」   寝てることに気づいた俊輔が、部屋に入ってくるなり尋ねてきた。  
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