チョコレート

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パキッと音がなって、それが砕ける。 板状で薄みをもつそれは、少し歯で噛めば視覚的にもいい音がして砕ける。通り過ぎればすぐ分かってしまうほどの甘いニオイを放つ。 茶色くて、あまい、それ。 それを食すのが日課になったのは、さていつからだったか。 今日はめずらしく外に行かず、そのかわり外がよく見渡せる窓の枠に座って僕は自分の好物を食べていた。 すると、斜め下の辺りから視線を感じる。 気にしないようにしているが、そんなにジロジロ見られ続けてはいい気持ちはしない。 ましてやコイツ、わざと視線や気配を残しているのでまた腹立たしい限りだ。 真っ黒な瞳。 まるで、まだ何もその目に映った事のないような、すべてを見透かすような……吸い込まれるような漆黒の目。 白く短い銀に煌めく髪が緩く巻いている。 彼の名を、ニアと言った。 遊びに誘ってもいつも答えはノーで、よく同じパズルをしている。 気がつけばオモチャや本で一人で遊んでいる。 たまに友達にキツいもの言いをして嫌われたりしているようだが、だがしかしニアはいつも正しかった。 自分の信があり、揺るがない揺るがせない。…ニアはそんな奴だった。 僕そんなニアからの視線に気が付き、顔を向ける。 案の定、お気に入りらしいLのロゴ入りの白いパズルをぱちぱち音を鳴らして解きながら、紛れもなくこっちを見ていた。 僕はニアが苦手だ。 嫌いじゃないけど、苦手だ。 (……ジロジロ見んなよ…) 視線が混じり会う。 向こうが外すわけでもなく、不自然にしばらく見つめ会った。 一度絡まってしまったものを無理矢理ほどく訳にもいかず、内心悪態を吐きながら適当話しかけた。 「……チョコ、いる?」 そういいながら差し出したのは、食べかけのチョコレート。 ……食べかけ、の。 ハッと気がついたが時すでに遅し。 ニアが、チョコを黙って凝視している。 ……まずった。 そうだよな、仲良くもない奴がいきなりチョコいるかなんて言って来たらまず引くよな。 ……どうしよう。 チョコを持った……否、差し出した手の行き場所がなくどうしようか考えたが、やはり何もなく沈黙だけが流れる。
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