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――やっぱだめだ。無理、こいつ苦手。
頭で固定して右手を引っ込めようとした時、ニアが口を開いた。
「………欲しいです。」
僕は一瞬、ニアが何を行ったのか分からず黙りこくった。
さぞかしマヌケな顔だっただろう。
くそ、悔しい。
気を取り直して瞬きをする。
何か勘違いしたのか、ニアが軽く首をかしげながら僕に問う。
「やっぱダメ、とかですか」
そのあまりに子供染みたセリフに、僕は拍子抜けする。
……なんだコイツ。
「…いや、んな事は……ないけど…」
意外にはっきりものを言う態度に驚きつつ返す。
「じゃあください」
いつも隅に座り込んで一人で遊んでいるソイツが僕とふつう(ふつう?)に喋っている、というよりも、今までまともに会話をした事すらなかったソイツと今会話らしきものを交わす自分に驚いた。
「でも、食べかけだぜ?」
「気にするんですか?なら最初から言わないでください」
「………」
「?なんですか私になにかついてますか」
「……いいえ」
「じゃあ必要以上に見つめないでください」
「見つめてないし!」
「そしてチョコください」
「繋がってないし!」
「そりゃあ息が続きませんから」
「何を言ってる?」
「貴方馬鹿なんですか?イギリスの…」
「もういいよ」
「どうでもいいですがチョコはいただきます」
「……お好きに」
「はい好きにします」
「…………。」
そうこうしてあっという間に右手のチョコをニアに取られた。
目の前では、パキッと音をいわせてチョコを食べるソイツ。
……なんでこうなってんだろう。
「……甘いですね」
一言感想を述べた後、そのチョコをあろうことか僕の口に突っ込んだ。
不意を突かれて息が詰まる。
…信じれんなんだコイツ!
むせそうになったが、すんでのところで我慢した。
「…やっぱり、似合いますね。」
すると、なぜか僕の顔を凝視しながらまた訳の分からない事を。
もう、なにがなんなんだこいつ!
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