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ほらまた、ひとつふたつ。
君の目から白珠が落ちる。
夜になる度に、彼女は泣くのだ。
冷たい水仕事であかぎれてしまった、痛そうな手で拭いながら。
それでも後から後から、堪えられなかった今日の分の悔しさを、綺麗な涙にして。
代わりに憎む事を捨てる為に。
灰塗れな彼女の顔を伝う涙は、綺羅星に瞬いて。
余りにも可哀相で、悲しくて。
美しかった。
僕にはその涙を拭う事は出来ない。
だからせめて、僕は彼女の幸せを願おう。
届かぬ想いを自覚したから。
叶わぬ願いを捨ててしまおう。
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