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魔法使いは恋をした。
灰に塗れた汚い娘。
己の理不尽を堪える哀れな娘に
彼女の髪は灰に煤けて
顔は埃で青白い。
痩せて骨張った指は痛々しくもあかぎれて
お世辞にも`美しく'などない娘
魔法使いは恋をした。
勉学に励み人恋しさなど忘れていたのに
服だって時代錯誤も良い処
富に豊でもない
人徳がある訳でもない
それでも彼は恋をした。
密やかに忍ぶ初めての。
娘の幸せを願うだけの、小さく可愛い、哀しい恋を。
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