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その頃、緋鳥は華京を負ぶって村からだいぶ離れた場所まで逃げていた。
幸いにもその間、敵と思われる者には遭遇しなかった。
緋鳥「ハァハァ.....。」
ここまでくれば安全だろうと思われる所まで来ると、ようやく緋鳥は一息つく為にすぐ側の茂みの中へと華京を背負ったまま身を潜めた。
華京「姉上、母上と兄上は?」
何が起きているのかよくわかっていない華京は、てっきり母と兄が先に待っていると思っていたようだ。
緋鳥「きっとすぐに来るよ...。」
緋鳥は困った様な笑顔で華京に言い聞かせる。
しかしその反面、緋鳥は母と兄の事が気がかりで今すぐにでも戻りたい思いだった。
青年「あれ?こんなところでどうしたんです?」
その時、いつからそこにいたのかわからないが、黒髪の優男風の青年が緋鳥達に声をかけてきた。
緋鳥「........。」
華京「兄上と母上を待ってるの!」
警戒するあまり何も言えずにいる緋鳥の気持ちを知る由もなく、華京は無邪気に青年に答えた。
青年「そうだったんですか。でもさっき向こうから怪しい男達が来るのを見ましたよ、僕は旅人だから見逃してもらえたんだけど。何でもこの先の村人を探してるとか言ってたなぁ。」
ドクン....
それを聞いた緋鳥は心臓が飛び跳ねる様な感覚に襲われた。
華京「どうしよう姉上、母上と兄上を早く迎えに行かなきゃ。」
さすがにそれが最悪の事態を意味することがわかるのか、華京は不安そうに緋鳥を見つめた。
青年「そうだ、それなら僕がここで妹さんについていますから、良かったらあなたが二人を迎えに行ってはどうですか?」
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