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青年はそう言って人の良さそうな優しい笑みを浮かべながら申し出た。
緋鳥「でも....。」
緋鳥はさすがに父を失い、村長が殺されるのを目の当たりにしておきながら、いくら人が良さそうだとは言え、見ず知らずの青年に妹を預けるのはとても不安だった。
緋鳥が全力で走れば数分の距離だが、例えその短い間でも得体の知れない人間と妹を一緒にするのはあまりにも軽率過ぎる。
まして、母や兄ならば絶対にそんな軽はずみな真似はしない。
緋鳥「やっぱりいいで...」
男「いたぞ!あれがそうじゃないか!」
緋鳥「!!!!」
緋鳥が青年の申し出を断ろうとしていたその時、彼の言った通り村とは正反対の方の道から村を襲った奴らと同じ黒い衣装の男達が数人見えた。
男達は緋鳥達に向かって一斉に走り出す。
(華京だけは守らなきゃ!)
緋鳥は向かって来る男達の姿を前に、自分の命に代えても妹を守ろうと覚悟を決めた。
青年「ここは僕に任せて下さい。」
緋鳥が戦う為の構えを取ろうとすると、ふいに青年が穏やかなあの優しい笑みでそう言って、緋鳥達に茂みから出ないよう手で制した。
緋鳥「ちょっ.....」
緋鳥は青年には到底無理だと思っていた為、怪我をする前に止めようとした。
フォンッ!
ザシュッ!
ズバァッ!
しかし、そんな緋鳥の親切は無駄になった。
その青年は緋鳥達に向かって来た男達を腰に帯びていた刀で一瞬にして片付けてしまったのだ。
男達は地面に崩れたままピクリとも動かない。
どうやら確実に一撃で仕留められているようだ。
青年の動きはあまりにも速く、物心ついた頃より鍛えられてきた緋鳥の目でも追うのがやっとだった。
青年「怪我はありませんか?」
そして、青年は何事も無かったかの様に血に濡れたその刀を懐から取り出した紙で拭き取りながら聞いてきた。
華京「うん!ありがとう、強いんだねお兄ちゃん!」
華京はすっかり会ったばかりの青年を気に入った様子だ。
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