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真夜中にも関わらず、その村だけはまるで血に染まったかの様に赤々と燃え上がっていた。
村人「うわー!逃げろ!ぎゃっ!?」
女「お願い!子供だけは助けて...ひっ!!」
逃げ惑う村人達を一人も逃がすまいと、武器を手に黒い衣装に身を包んだ大勢の男達が襲いかかる。
村中の至る所に生い茂っていた、羽の形をした珍しい草があっという間に燃え尽きていく。
村長「まさかここを嗅ぎ付けただけでなく、羽草村の村人である我らをここまで追いつめるとは...。」
この村の長である老人が杖をつきながら、厳しい表情で呟く。
女「村長様、私達はこれからどうしたら...。」
老婆「村の若い衆はほとんどあの黒い奴らに殺されてしもうた...残っているのもここにおる儂らだけじゃろうて。ほんに、儂ら老い先短い者が死ねば良かったに何で倅達が死なねばならんのじゃろうかのぅ。」
村の入り口から一番遠い場所にあるこの村長の家には、女性やお年寄り、妊婦や出産したばかりの母子、病や怪我で動けない者達が避難していた。
皆、それぞれ悲しみと不安を隠せず、肩を寄せあいながら怯えている。
村中が火事だらけのせいで、熱風がここまで押し寄せ、雪の降る季節なのにも関わらず部屋の中は真夏の様に暑い。
赤ん坊「ふぎゃぁーん!ふぁあ~んあん!」
暑さのせいか生まれたばかりの赤ん坊が泣き始める。
女「村長様、このままここでこうしていては皆この村と共に焼け死ぬだけです!動ける者、戦える者で道を開いて妊婦や子供達を逃がしましょう!」
その時、一人の女性が立ち上がって村長に申し立てた。
女性は赤い髪を後ろで束ね、額に白い鉢巻をして村独特の戦闘用の衣装を纏い、腰に帯びた刀の上に手をのせながら髪と同じ色の瞳で村長を見つめている。
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