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少女1「母上、怖いよ。」
それを見た一番小さな少女が今にも泣きそうな顔で紅羽にしがみついた。
少女2「大丈夫だよ華京(かきょう)、私と兄上で守ってあげるから。」
もう一人の少女が怯える少女に優しく言ってその頭を撫でるが、少女の手もまた微かに震えていた。
少年「そうだ、大丈夫だぞ華京。緋鳥もな。」
青年は二人の妹を励まし、安心させようと微笑んで見せる。
男1「ちっ、こんな所にもまだ居やがったのか。疎ましい虫けら一族が!」
ふいに、男達の中の一人が中にいる村人達を目にした瞬間、面倒くさそうに舌打ちした。
男2「仕方ねぇさ、これも志々雄様の為だ。ちゃんとやらねぇと俺達があの世往きになっちまうんだぞ?」
別の男がその男を宥めるように言う。
男3「そうそう。なぁに、刀の錆がほんの少し増えるだけのことよ。へへっ、確か赤ん坊も容赦するなとの命令だったよな?」
さらに別の男がそう言って泣き止まない赤ん坊に目をやる。
村長「待て貴様ら!村の者には手出しはさせぬ!」
村長がそう言って男達の前に杖を構えて立ちはだかった。
男1「あん?何だこの爺は?よし、面倒だからさっさと片付けちまうぞお前ぇら!」
男達「おぉっ!」
その言葉で男達は一斉にいきり立ち、既に血に濡れている刀をそれぞれ構えた。
男1「死ねぇぇっ!この老いぼれがぁっ!」
男の一人が村長に罵声を浴びせながら刀を振りかざした。
村長「我が内に眠りし風の力よ、敵を退けよ...かぁっ!!」
村長はそう言って刀を振りかざした男に向かって片手を突き出し、気合いを入れる様な声を上げる。
すると突然、男は物凄い強風に煽られた様に家の外まで吹き飛ばされた。
男達「くそがやりやがったなっ!!」
それを見た男達は逆上し、一斉に村長に向かって襲いかかった。
ドンッ!
紅羽「村長!!」
敵が放ったらしい煙幕のせいで、姿が見えなくなってしまった村長を心配した紅羽は思わず叫ばずにはいられなかった。
ザシュゥッ!
ザクッ!ザクッ!
ドスッ!
ドサッ!
次の瞬間、煙幕の向こう側で鈍い音と何かが倒れる様な重い音がした。
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