初幕~血染めの夜~

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村人達「.......。」 紅羽「.......。」 子供達「.......。」 皆、煙幕が晴れていくのを静かに息を飲んで見守った。 男達「へへへっ、ざまぁ見やがれこのクソ爺!我々、志々雄様率いる一派に楯突くからこうなるんだ思い知ったかバカが!」 煙幕が晴れると同時に現れたのは、黒い男達の集団とその前に血まみれで倒れている村長の姿だった。 紅羽「村長!!」 紅羽は迷わず村長の元に駆け寄った。 しかし、彼女から見てもその傷からして村長の命が残り僅かなことは明らかだった。 村長「う...ぐっ!紅羽...これを使え...最早、皆を救うなどと綺麗事は言っておれぬ...。この際たった一人でもよい、必ず村の者を逃がすのじゃ...このままここで滅びてはならぬ!ゴホッ!?...........。」 村長は最後にそう言い残すと、自分の手に握りしめていた緋色の羽草を紅羽に託し、そのまま血を吐いて言切れた。 紅羽「........。」 紅羽は村長の亡骸を強く抱きしめ、託されたその羽草を躊躇うことなく口にした。 男達「なっ、何だあの女は!?」 紅羽の異変に気づいた男達は初めてうろたえた姿を見せる。 羽草を口にした紅羽の赤い髪はより一層赤く染まり、燃え上がる炎のごとく逆立ち、瞳までが激しく燃え上がる炎の様に輝き、その瞳には底知れぬ怒りの色が宿っていた。 紅羽「白狼、お前は華京と緋鳥(ひどり)を連れて皆と逃げなさい!皆も早く逃げて!」 紅羽は二人の少女の背を少年に向かって押し出し、すぐに腰の刀を抜いて構えた。 白狼「しかし母上!」 紅羽「行きなさい!!」 戸惑う息子に紅羽はとてつもない気迫で威圧するように叫んだ。 白狼「はい。」 白狼は母のただならぬ気迫に圧され、仕方なく既に逃げ出す村人達に混ざり、二人の妹の手を引いて裏口から村長の家を後にした。 白狼「ハァハァ....!」 白狼は、他の村人達よりもずっと速く華京と緋鳥の手を引いて走った。
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