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『この男イカれてるー。助けを呼びに行こう!』
マリアが立ち上がって部屋から出ようと、ドアを目指した。
「おい、どこ行くのさー!お前が出ていったら、こいつ殺すからな」
マリアが男の方に目をやると、男は銃らしきものをセイの方に向けていた。セイは嬉しそうに揺れだした。
『どう考えても偽物…。だけどもし本物だったら!それに銃が本物でも偽物でも、わたしがここを離れてる間に、せいちゃんに何かあるかもしれない』
「どうすればせいちゃんを解放してくれますか」
「ふふ、物分かりがいいね、マリアちゃんは。大丈夫だよ、俺の言う通りにすればさ!」
というわけで、マリアの奇妙なペット生活が始まった。
マリアが男の足をあまりに必死に舐めまわしたために、男にキモい、と殴られた時であった。これまでマリアと男のやりとりに何も関心を示していないように見えたセイが、喚きはじめた。
「たすけて!たすけて、こわいよお」
それを聞いた男は、面倒くさそうに舌打ちをして立ち上がり、マリアに注射器を差し出して言った。
「これを、鈴原にさしなさい」
マリアは首を傾げていたが、やっと状況がわかった。しかしマリアはセイに注射する前に、自分の腕にしようとした。
「こら!誰が自分にさしなさいって言った!」
男はマリアをぶった。マリアは仕方なくそれをセイのもとに持って行った。セイはそれこそ好物を目の前にした犬のように目を輝かせた。手を伸ばそうとするもの、手錠でつながれているために身動きが取れないでいた。
「ちょーだいちょーだいちょーだいちょーだい」
マリアがセイの腕に注射すると、セイは喚くのをやめて静寂を取り戻した。
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